梯久美子「散るぞ悲しき」

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道

 硫黄島総指揮官、栗林忠道中将の物語。この本を読むと、栗林は異端の将軍であり、硫黄島守備隊もエリート軍団ではなかったことがわかる。栗林は陸軍士官学校、陸軍大学の出身ではあるが、幼年学校出身者ではない。エリート中のエリートではない。しかも、留学先もドイツではなく、米国だった。陸軍幼年学校の外国語はドイツ語、フランス語、ロシア語で、英語はなかったのだそうだ。一方、硫黄島に集められた兵隊は既に戦争末期であり、少年と壮年の召集兵だったという。それが第2次大戦で最激戦を演じたというの歴史の皮肉なのかもしれない。この最終局面に至っても、陸軍と海軍はいがみ合っていた。硫黄島の戦いというのは、異例中の異例だったのだと改めて思う。