闇へ

民主主義の膝元でテロ撲滅の美名の下“拷問”が容認されるのはなぜか?アフガニスタンで、テロリストと疑われ捕えられ、死亡したタクシー運転手の事例を軸に、アフガニスタンキューバグアンタナモで“拷問”に関わった調査官、被害者へ取材、またアメリカの政策決定者への取材を重ね、拷問現場の証拠写真で構成する番組。

 アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した「闇へ」(原題:Taxi to the Dark Side)は、NHKなど世界各テレビ局が共同で制作したシリーズ「民主主義」の米国制作編の映画版。アカデミー賞の受賞を機にアレックス・ギブニー監督のインタビューとともに放映していた。重い記録映画。ブッシュとプーチンは似合いの政治家だったかもしれない。チェチェン紛争がロシアを傷つけているように、ブッシュはアフガニスタン戦争、イラク戦争で米国を痛めつけた。ややこしいのは、ロシアも米国も表面的には繁栄しているが、その根っこの部分、国の品格、理念の部分を汚している。国としての本当の強さ、危機に直面したときの復元力を削いでしまっているように思う。ブッシュは結局、社会を分裂させ、崩壊の芽を作ることになるのではないか。サブプライム危機、ドル危機は、そうしたブッシュ政権のダークサイドがもたらした帰結のようにも思える。ただ、一方で、こうした映画がつくられ、それがアカデミー賞を受賞すると言うことは、まだ米国に健全性が残っている証左かもしれない。少なくとも、アレックス・ギブニーは、アンナ・ポリトコフスカヤのように自宅の前で射殺されるようなことにはなっていないし。
【参考】
・「闇へ」の米国オフィシャル・サイト
 http://www.taxitothedarkside.com/
YouTubeにある予告編