小室直樹「日本の敗因」

 副題に「歴史は勝つために学ぶ」。歴史の「if」を考えることは面白いのだが、大東亜戦争(太平洋戦争)に「if」を重ねつつ、どうしたら米国に勝てたかを考える。極論のように見えて、これが意外と説得力があったりする。もっとも戦争は「fog of war」という言葉もあるように、霧の中にいるような不確実性のなかでの決断の連続だけに、こう上手く行くかどうかはわからないけど、面白い。ただ、この「if」を突き詰めていくと、日本の構造問題が見えてくる。それが「腐朽官僚制(ロトン・ビュロクラシー)。軍人も官僚であり、いま日本が直面している官僚問題と、日本を敗戦に導いた軍事官僚の問題は通底している。日露戦争の分析は荒っぽい感じもしたが、極論の中から本質が見えてくることもあるんだなあ。それが小室直樹氏の手法でもあるが。