田村秀男:経済で読む「日・米・中」関係

扶桑社新書 経済で読む「日・米・中」関係~国際政治経済学入門~

扶桑社新書 経済で読む「日・米・中」関係~国際政治経済学入門~

 経済は政治を動かし、政治は経済を動かす。米国と中国のパワーゲームの中で日本は生きていくんだなあ、と改めて思う本。イラク戦争の背景に、サダム・フセイン原油取引のユーロ建て化で米国の怒りを買ったというのは納得だな。その延長線上に、米国の対イラン戦争論があるというのは説得力がある。イランも原油のユーロ建て取引を主張している。ドルこそが覇権の根源であり、原油のドル建て本位制は米国として譲れないという。核兵器開発よりも何よりも、ドル覇権に挑戦する国、イランへの反発というほうが理解しやすいなあ。北朝鮮核兵器を開発しても、お目こぼしに。それもこれも北朝鮮はドル札の偽造はしても、ドル本位制を毀損しようとまではしていないことを考えると、納得。それよりもイランのほうが危険な国なんだろうなあ。資源大国、ロシアもドルからの離脱を狙うだろうから、すると、また米ロ対決の構図になるのだろうか。
 そんな中で日本はどうするのか。米国も、中国も、そしてロシアも厄介な国だからなあ。否応なく、米国について行かざるを得ないというのが現実的な選択と、この本では主張するが、しかし、サブプライムで見えてしまった米国金融のモラルハザードをどう考えるのだろう。みんなでドルを支えなければならないというのは、世界経済安定のためのコンセンサスではあるのだが、支えられることを前提にされてしまうと、経済は放埒に走ってしまう。現に、それがサブプライムだったわけだし。ここで、米国の問題を先送りして、その先に一体、何があるのか。米国のパシリとして良い生活はさせてもらってきたわけだけど、もう歳をとって、そう身軽に走り回れるわけでもなく、新しいパシリとして新興国のほうが元気がありそうだし、仕えてきた親分のほうもパシリにどれだけの分け前をくれるか、わからないし・・・。米国と離れることができないのは当然としても、どの程度の距離感を持つのか、あるいは、副収入を稼ぐ手だてを考えるのかーーなどなど、日本も難しい時期だなあ、と考えさせる本だった。