善き人のためのソナタ

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

　アカデミー外国語映画賞をはじめ、多くの映画賞を総なめにしたドイツ映画。評判通り、この映画は良かった。東独のシュタージによる監視社会を描く。有能で実直なシュタージが、女優を自分のものにしようとするスケベ爺の大臣の命令で、その女優の恋人の劇作家を盗聴・監視する。しかし、そのうちに人間性が目覚めて、この恋人たちを守ろうとする。監視社会、官僚社会の不条理は東独の歴史的現実を描くが、それは過去のものとはいえない。911以降は、米国でも盗聴・監視は容認されてきているし、どこかで一線を越えてしまう可能性を持つ。そうしたなかで、人間的に生きるということの美しさと難しさと切なさを描く。甘くはなく、といって、シニカルにでもなく、描いているところが、この映画の良さだろう。主演のウルリッヒ・ミューエが素晴らしい。しかし、この人、この映画の1年後に病死してしまった。残念だなあ。
【参考】
・公式サイト
　http://www.albatros-film.com/movie/yokihito/
・ウィキペディアでは
　wikipedia:善き人のためのソナタ