半藤一利「戦う石橋湛山」

戦う石橋湛山―昭和史に異彩を放つ屈伏なき言論

戦う石橋湛山―昭和史に異彩を放つ屈伏なき言論

 ワシントン海軍軍縮条約から国際連盟脱退に至るまで、大正末期から昭和の激動期に、日本の言論はいかに行動したのか。東洋経済新報社で「小日本主義論」を展開した自由主義者石橋湛山の孤軍奮闘ぶりを軸に日本の新聞、雑誌ジャーナリズムを描く。新聞や雑誌が最初から軍に弱かったわけではなく、むしろ戦争で部数を増やそうという「商業主義」の果てに軍におもねり、気がついたときは軍には何もいえなくなってきた感じがする。戦うべきに戦わないと、間に合わなくなってしまうんだなあ。加えて、世の中、タカ派的な好戦的論調の方が受けがいいわけで、商売相手が情緒的積極論で来たときに、冷静な議論を続けることはむしろ勇気が要るのだなあ。商業主義的事情で、派手な戦争報道で世間を煽り、冷静に書くべきことを書かずに国を誤らせるーーこれって日本だけではなくて、ブッシュ政権下の米国メディアも同じだったかもしれない。アフガニスタン戦争とか、イラク戦争とか。