村上春樹「神の子どもたちはみな踊る」

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

 阪神大震災のあとに書かれた連作「地震のあとで」という6編の短編小説集。5編が「新潮」誌の連載、1編が書き下ろし。といっても地震をそのまま描くのではなく、地震を遠景に人間を描く。個人的な好みでいうと一番好きなのは「蜂蜜パイ」。やさしさと甘さと、ちょっと臭いかもしれないが、「地震のあとで」の連作のラストには合っている。ちょっとサリンジャーの「ライ麦畑」風でもある。このほか好きなのは「アイロンのある風景」「タイランド」「UFOが釧路に降りる」。「かえるくん、東京を救う」がこのあとにきて、タイトルの「神の子どもたちはみな踊る」は嫌いではないけど、特に好きと言うほどでもなく。