レイモンド・カーヴァー「頼むから静かにしてくれ I」

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

頼むから静かにしてくれ〈1〉 (村上春樹翻訳ライブラリー)

 村上春樹翻訳ライブラリー・シリーズの1冊。レイモンド・カーヴァー全集では1冊だった短編集が、ライブラリーでは2冊に分かれ、これは、その上巻。レイモンド・カーヴァーの小説には不思議な味がある。何かが起きそうで、何も起きない。しかし、何も起きていないようで、何かが起きている。何かが壊れている。あるいは、何かが壊れようとしている。そこに現代の生活の断面が見事に描かれている。静謐だが、どこか哀しい。読んでいると、アンドリュー・ワイエスの絵が頭に浮かんでくる。米国というと、底抜けに明るい感じがするが、カーヴァーやワイエスが描く世界もきわめて米国なんだなあ。