村上春樹編・訳「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど」

月曜日は最悪だとみんなは言うけれど

月曜日は最悪だとみんなは言うけれど

 レイモンド・カーヴァー論、ティム・オブライエンのエッセイ・短編小説など米国の雑誌や新聞に掲載された話を村上春樹が選んで翻訳したモノ。レイモンド・カーヴァー論に惹かれて読み始めたのだが、ティム・オブライエンが面白かった。オブライエンの名前は知っていたが、これまで読んだことなかった。この本に収録されている「私の中のヴェトナム」は哀切で胸を打つ。ガールフレンドと、かつて従軍したベトナムの戦地を訪ねるルポと、そのガールフレンドと別れて、ぼろぼろになっている現在が交錯していく。短編小説の「ノガレス」「ルーン・ポイント」も哀しい物語。オブライエンの代表作である「本当の戦争の話をしよう」を読んでみようかと思う。
 このほかの収録作では、レイモンド・カーヴァーの作品に大幅に手を加えたと言われる編集者のゴードン・リッシュとの関係を描いたD.T.マックスの「誰がレイモンド・カーヴァーの小説を書いたのか?」、ジョン・ホール・ニューポートによるジョン・アーヴィングの人物論「ジョン・アーヴィングの世界」(改訂版)、作家が自ら自伝的作家論を展開するトム・ジョーンズ「私は・・・天才だぜ」、デニス・ジョンソンの「シークレット・エージェント」も面白かった。それぞれの文章につく村上春樹の解説も秀逸。「ジョン・アーヴィングの世界」は、村上春樹が見たジョン・アーヴィングが活写されている。
 タイトルの「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど」は、トム・ジョーンズに関する村上春樹の解説で紹介されるブルース曲「ストーミー・マンデー」の歌詞の一節。「月曜日は最悪だとみんなは言うけれど、火曜日だって負けずにひどい」(They call it stormy Monday, but, Tuesday's just as bad)から来ている。この本のタイトルに惹かれて読み出したところもある。