今年のアカデミー賞、インドが席巻。「おくりびと」も元をたどれば

おくりびと」と「つみきのいえ」のダブル受賞に沸いた23日の第81回米アカデミー賞授賞式。主要部門ではインドのストリートチルドレンを描いた「スラムドッグ$ミリオネア」(ダニー・ボイル監督)が作品賞、監督賞など8冠を獲得した。生きる希望を伝えるアジア発のエンターテインメントが、経済危機のハリウッドに新しい風を吹き込む展開となった。

スラムドッグ$ミリオネア [DVD] 今年のアカデミー賞は予想通り、「スラムドッグ$ミリオネア」の圧勝だった。作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、主題歌賞と、主要部門を総なめした。ちょっと「イングリッシュ・ペイシェント」のときを思い出すなあ。ともあれ、ダニー・ボイルが監督賞をとったのがうれしい。好きな監督だから。
 で、事前の予想との比較でいうと、主演女優賞のケイト・ウィンスレット助演男優賞ヒース・レジャーは、がちがちの本命。いつも激戦となる助演女優賞ペネロペ・クルスが制したが、これも順当なところ。最大の番狂わせは、カムバックで大本命とみられいたミッキー・ロークが主演男優賞を、暗殺されたゲイの政治家を演じたショーン・ペンに奪われたこと。この「カムバック」と言うことに対するハリウッドの評価というのは、ちょっと読めないところがある。第69回アカデミー賞でも、無冠の大女優で、やはりカムバックで大本命といわれいたローレン・バコールが「イングリッシュ・ペイシェント」のジュリエット・ビノシュ助演女優賞を譲ったことがあった(このときは、バコール大本命ということで、ビノシュはまさか自分が受賞するとは思わず、名前を呼ばれても、すぐに自分だと気がつかず、慌てて出て行く場面もあった)。ショーン・ペンも、ミッキー・ロークも、ハリウッドのはぐれモノという感じがしたけど、いまやメーンストリームにいるんだなあ。
おくりびと [DVD] 最後に「おくりびと」の外国語映画賞。これも本命は、イスラエルの「バシールとワルツを」だった。ただ、後講釈で考えると、アニメであったこと(ハリウッドは賞をアニメに出すことには抵抗感がある様子)と、イスラエルの暗部を描いてはいるものの、ガザ侵攻のあとでもあり、政治的なテーマが忌避されたこともあるかもしれない。ただ、それ以上に、「おくりびと」が、バブルが崩壊し、金融・経済危機の中で内省の時代を迎えた米国に合っていたのだろうなあ。主人公はリストラされた人ともいえるわけだし。バブル崩壊先進国の日本だから、送り出せた傑作だったのかも。それと、もうひとつ、「ほぼ日刊イトイ新聞」での鼎談「死を想う」によると、「おくりびと」の発案者であり、主役の本木雅弘はインド旅行をきっかけに、死について考えるようになったという*1ダニー・ボイルも、本木雅弘も、創造の原点はインドにあった。ということで、今年のアカデミー賞は、、インドが席巻した年といえるんだろうなあ。
「OSCAR.com」で候補作と受賞作をみると
 http://www.oscar.com/nominees/?pn=nominees