チャールズ・R・モリス「なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか」

なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物

なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか―信用バブルという怪物

 現在の信用恐慌を予見した本。原題の「The Trillion Dollar Meltdown」というほうが内容を的確に表現している。レーガンサッチャー以降の自由主義新保守主義の果て、金融がどこに行きつき、1兆ドル溶融(崩壊)という事態に立ち至ったかが、リベラリズム保守主義(自由放任、市場主義)のサイクルも交えて語られる(ケインズ学派とシカゴ学派のサイクルとも言える)。政府主導にも効用と弊害があるし、市場主義にも効用と弊害がある。サブプライムCDOCDSLBOヘッジファンドなど、金融の「進化」が、薬から毒へと変化していったことがわかる。人間の欲望には際限がないんだなあ。欲望をコントールすることは難しく、すぐに行き過ぎてしまう。それが人間なんだろうけど。この本で知ったのだが、経済学者のハイマン・ミンスキーによる金融危機の理論によると、「不安定性と危機が金融市場の本来の特徴」だという。リスク管理イノベーションから、まずは「ヘッジ」として生まれた金融が次第に「投機」となり、それが最後は「ポンジ」(ネズミ講)となる。マイケル・ミルケンが「ジャンク債」のスキームを生み出したときは、イノベーションだったが、最後はマドフになってしまうわけね。説得力があるなあ。現代の経済を読み解き、理解するのに、格好の本。で、グローバル化の時代、崩壊するのは「アメリカ経済」だけではないけど。