現在の信用恐慌を予見した本。原題の「The Trillion Dollar Meltdown」というほうが内容を的確に表現している。
レーガン、
サッチャー以降の
自由主義・
新保守主義の果て、金融がどこに行きつき、1兆ドル溶融(崩壊)という事態に立ち至ったかが、
リベラリズムと
保守主義(自由放任、市場主義)のサイクルも交えて語られる(
ケインズ学派と
シカゴ学派のサイクルとも言える)。政府主導にも効用と弊害があるし、市場主義にも効用と弊害がある。
サブプライム、
CDO、
CDS、
LBO、
ヘッジファンドなど、金融の「進化」が、薬から毒へと変化していったことがわかる。人間の欲望には際限がないんだなあ。欲望をコントールすることは難しく、すぐに行き過ぎてしまう。それが人間なんだろうけど。この本で知ったのだが、経済学者のハイマン・
ミンスキーによる
金融危機の理論によると、「不安定性と危機が金融市場の本来の特徴」だという。
リスク管理の
イノベーションから、まずは「ヘッジ」として生まれた金融が次第に「投機」となり、それが最後は「ポンジ」(
ネズミ講)となる。マイケル・ミルケンが「ジャンク債」のスキームを生み出したときは、
イノベーションだったが、最後は
マドフになってしまうわけね。説得力があるなあ。現代の経済を読み解き、理解するのに、格好の本。で、
グローバル化の時代、崩壊するのは「アメリカ経済」だけではないけど。