小林弘人「新世紀メディア論」

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に

 インターネットに加えて、金融危機に端を発した大不況のなか、米国では新聞の休刊が相次いでいるし、新聞も雑誌もテレビも大変なことになっているが、「新聞・雑誌が死ぬ前に」という刺激的なサブタイトルを持ったメディア論。現在のメディアの状況が整理され、今後の方向性が展望されていて面白かった。例えば、現在の状況は・・・

 いまは、マスメディアの小さな村(影響力はまだ大きい)を取り囲むようにして、ナノ(極小)メディアの群れが覆っています。

 そんな感じだなあ。で、

 もしかしたら、紙メディアはひたすら、その信頼を担保に企業ブランド向上のために記事を書いたり、広告を集めるという、ある種の心理マーケティング向上のために用いられる方向に進むのかもしれません。

 とか

 もはや紙メディアは、作っている側が食べるために刊行し続けるといった様相を呈しています。あるいは、読者とともに高齢化した「村」と化し、かつての権威も最近の消費者にとっては無関係になってしまったのです。消費者はまず紙をめくるよりも早く、ネット上で検索するのですから。よって、読者を中心に考えた場合、情報の入手は「紙をめくる」という行為よりも、電子デバイスを「クリックする」という方向にシフトしてしまったのです。

 とか、メディアの現状が語られる。そんな感じになっているのか。で、今後のメディアのカギは「ストーリー」だという。

 ストーリーにより、信頼やブランドが醸成される時代です。ストーリーは、テキストだけで構成されるとは限りません。動画や音声などのリッチコンテンツはもちろん、ユーザーによるフォーラム(掲示板)、ブログやSNSソーシャル・ネットワーキング・サービス)、Wikiも駆使し、紡がれていきます。

 メディア企業から読者・消費者へという一方通行の流れではなくなっていくんだなあ。そこでは、ストーリーテリングの能力が問われてくると言う。インターネットで生まれてきたメディアやコミュニケーションのツールを使って、ストーリーが増殖、発展させていく能力がメディアにも求められるんだなあ。ネットでの発言を「便所の落書き」と言っているようでは、どうしようもない。
 で、ポール・サフォの「未来を見通す法則」というのが紹介されていた。

 見通せないときがあることを知れ
 突然の成功は、20年以上の失敗の上にある
 未来を見通すには、その倍、過去を注視せよ
 前兆を見逃すな
 (見通すときは)中立であれ
 物語れ、あるいは、図にするがよい
 自分の間違いを立証せよ

 なるほど。「クラウド」が乱舞するITといい、メディアといい、パラダイムシフトのときなんだろうか。