澤地久枝「石川節子ーー愛の永遠を信じたく候」
- 作者: 澤地久枝
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1991/12
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
もう一つ、この本を読んでいて、意外だったのは、啄木は世に認められていなかったといっても、それは全く無視されていたというわけでもないこと。森鴎外の支援も受けていたし、死んだときは東京朝日新聞の社員で、葬儀には、夏目漱石、木下杢太郎、北原白秋、佐佐木信綱が参列している。朝日にしても、小樽日報にしても、啄木は必ずしもチャンスに恵まれていなかったわけではないが、収入は一家を支えるには足りなかった。もし父親が住職の座を追われず、家族の生計を支える義務がなかったら、もし盛岡中学校を退学していなかったら、もし若くして結婚していなかったら(節子との結婚式の予定の日に啄木は帰らなかった)・・・。啄木の人生は、もっと安定したものになっていたかもしれない。でも、そうしたとき、啄木の芸術が生まれていたかどうかはわからない。難しいもんだなあ。