東京都写真美術館編「昭和の風景」

昭和の風景 (とんぼの本)

昭和の風景 (とんぼの本)

 「昭和の風景」というが、戦後が中心。土門拳木村伊兵衛秋山庄太郎から森山大道篠山紀信荒木経惟まで戦後写真史を飾るカメラマンが取り上げられ、東京写真美術館の金子隆一、鈴木佳子、藤村里美の解説が付く。
 菊池俊吉の「浮浪者収容所施設の栄養失調児」は、浮浪児の正面と後ろ姿を撮影したものだが、衝撃的。「火垂るの墓」「アメリカひじき」など野坂昭如の小説を思い出す。林忠彦の「太宰治」や「坂口安吾」は有名な写真だが、人物写真として秀逸。「作家!」という感じ。細江英公三島由紀夫を撮った「薔薇刑」、篠山紀信の「カルメン・マキ」もいい。人物が時代を象徴するが、その人物と時代を写真に焼き付けるのは、やっぱりカメラマンの力量だなあ。佐藤明の「おんな(岸恵子)」は、岸恵子らしく洗練されたポートレイト。財界人や政治家の写真もある。しかし、松下幸之助土光敏夫佐藤栄作田中角栄、みんな風格があったなあ。で、ちょっと、びっくりは細江英公の「澁澤龍彦、作家」。若い!澁澤というと、サングラスという感じなのだが、素顔。若いときは、こんなだったのかあ。で、ほのぼのは、山端庸介の「防空壕に避難して助かった女性」。廃墟にある防空壕の穴から顔を出した女性の笑顔がいい。