「ハインリヒ・ベル短篇集」

ハインリヒ・ベル短篇集 (岩波文庫)

ハインリヒ・ベル短篇集 (岩波文庫)

 ドイツの戦中派作家、ハインリヒ・ベルの短編集。ハインリヒ・ベル、どこかで聞いたと思ったら、「カタリーナ・ブルームの失われた名誉」の著者だった。で、読んでいくと、印象に残ったのはやはり、戦争中の話、敗戦直後の廃墟の話。ドイツ兵の側から見ると、こういう風景になるのか。考えてみれば、ドイツには「西部戦線異状なし」とか、反戦小説の名作があった。この短編集では、「旅人ヨ、スパルタノ地ニ赴カバ、彼ノ地ノ人二・・・」「長い髪の仲間」「あの頃オデッサで」「ルネおばさん」「橋の畔で」「別れ」「並木道での再会」「ローエングリーンの死」「ろうそくを聖母に」が良かった。哀しく、切ない。一方、「黒羊」「フレットおじさん」はユーモア小説で、こちらも面白かった。