三岸節子画文集「未完の花」

 三岸節子の絵(花の静物画とパリやベネチアの風景画)とエッセイ集。絵も素晴らしいが、文章も味がある。夫であった三岸好太郎に関する文章は切々たるものがあり、胸を打たれる。31歳で夭逝した天才の夫との短い生活は、かけがえないのものであると同時に、凄絶であったようだ。こんな文章がある。

 三岸死亡の電報が名古屋からきたとき、助かった、と思った。これで自殺しなくてすむとね。二〇代の一〇年間、かけがえのない代償を払って学んだもの大きかった。来世で結婚するんならまた三岸ですよ。悪い男ですが。

 すごいなあ。これが愛なのかも。これが芸術の原動力だったのかも。長い人生に関する文章も心を打つ。ますます三岸節子が好きになってしまった。