聞き書き・林寛子「三岸節子 修羅の花」

三岸節子 修羅の花

三岸節子 修羅の花

 最近、マイ・ブームの三岸節子の本。波乱の人生を本人自らが語る。しかし、凄絶な人生。足が悪いことをこの本で初めて知る。そのために母親からは疎まれ、小学校ではいじめられ。そうした過去があったのか。あの絵からは想像もできないけど。本人は、自分の人生をこう語る。

 ただ八十年、がむしゃらに闘ってきた。力いっぱい、ぶつかって、傷ついて、駄目になる土壇場で、生き返ったわけですよ。何度も何度も、決して負けなかったんです。
 私ね、女だから、子供たちがいるからハンディキャップになるという考え方と逆なんです。むしろ、子供があるために、一層充実しなければならない。いかなる逆境も、仕事の糧になりこそすれ、マイナスにはならない。
 努力、努力、努力なんです。あらゆる逆境もプラスにしなければならない。もし足が完全だったら、こんな人生、送ってこなかったと思うんです。家が破産したり、好太郎のような貧しい人と一緒になったり、自ら好んで逆境ばかり選んできたような気がするんです。非常に私は、我慢強い建設的な人間なんです。逆境に打ちのめされない。むしろ絶望であるがために一層それをプラスにする。

 すごいなあ。あの絵の背景に、こんな強さがあったのだなあ。情熱だけの人ではなかったんだなあ。
 三岸好太郎は、女性関係が絶えず、相手の女性が変わるたびに作風が変わったという。ピカソも女性が変わると、画風が変わったという。人間って、やっぱり男と女なんだなあ。