高橋靖夫「金、復活!」

金、復活!21世紀の米世界戦略とは―A RETURN TO THE GOLD STANDARD

金、復活!21世紀の米世界戦略とは―A RETURN TO THE GOLD STANDARD

  危機の時代、特にドル危機の懸念が出てくると、金本位制の議論が出てくる。で、米国の金本位制復帰のシナリオを論じた、この本を読んでみる。超大国としての座を維持しようつる米国のシナリオ。ニクソン・ショックの時から織り込み済みという「読み」。筆者の仮説ではあるが、それを例証(示唆?)する出来事やら発言もあり、興味深く、刺激的。
 で、本筋とは関係ないのだが、グリーンスパンが1960年代に語ったという金本位制復帰の思想。

 金本位制を捨てたことによって、社会主義者達は際限なく国債を発行する手段をえたのである。この結果、かつては金であった銀行の準備は、今や国債になってしまったのである。預金や国債保有者は、その請求権が何か実体のあるものによって担保されていると信じているが、そんなものは何もないのである。

なるほど。さらに、こう続く。

 金本位制が廃止された結果、我々は我々の富を守る手段を失ってしまったのである。今や価値の貯蔵手段はない。福祉国家を支える財政学には、富の手段を守る手段はないのである。財政赤字は我々の富を掠め取る仕組み以外の何物でもない。金本位制こそが我々の富を守るのである。

 いま日本でも民主党政権の財政規律が議論されている時代になると、この発言は保守派からのものではあるが、味わいがある。金本位制は、経済を制約するといわれるが、その制約が必要なこともあるということか。ドル不安が高まる中で、資源バスケット本位論があったが、これも、1987年に、当時のベーカー財務長官がIMF世界銀行総会で「金を含む商品バスケット」構想を提案した話も紹介されている。20年以上前からあった議論だったのか。
 高橋氏の金本位制復帰のシナリオのステップとしては

フェーズ1 25%部分的金本位制
フェーズ2 金約款付財務省証券発行
フェーズ3 金・商品バスケット
フェーズ4 変動金本位制

となっている。米国の覇権維持のシナリオとしては選択肢のひとつかも。いずれにしても、米国、ユーロの優位になる。