ダニエル・ピンク「フリーエージェント社会の到来」

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

 副題に<「雇われない生き方」は何を変えるか>。大企業に属するのではなく、セルフ・エンプロイメントというか、フリーランス、ミニ起業家として生きる方法をレポートする。こうしたフリーエージェント的なワーク・ライフ・スタイルが出てきた背景には、4つの経済的・社会的な変化がビジネスピープルを襲ったからだという。

(1)従来の労使間の社会契約、すなわち従業員が忠誠心と引き換えに会社からの安定を保障してもらうという関係が崩壊した。
(2)生産手段(富を生み出すのに必要な道具)が小型で安価になって個人で所有できるようになり、操作も簡単になった。
(3)繁栄が社会の広い層に行き渡り、しかも長期間続いている結果、生活の糧を稼ぐことだけが仕事の目的ではなくなり、人々は仕事にやりがいを求めるようになった。
(4)組織の寿命が短くなり、人々は勤め先の組織より長く生きるようになった。

 こうしたなかで、スターバックスのような会社でも家庭でもない第三の場所(打ち合わせ、商談に最適)やキンコーズなどのビジネスサポート・サービスなど、個人ビジネスにとってのインフラも急速に整ってきた。何よりもインターネットの普及は大きい。
 一方で、臨時社員の問題(日本でいう「派遣切り」)などフリーエージェント社会の暗部についても触れている。税制、医療保険など課題も大きい。
 それでも、グローバルな競争の激化に伴い大企業の雇用を守る力が衰微し、豊かな社会で(世界を相対的に見れば、先進国が豊かであることには変わりはなく)従業員のワーク・ライフ・バランスに対する意識も変化していく中で、どのように雇用を確保していくかというと、フリーエージェント的な世界はひとつの答えであったりはする。
 読んでいて、改めて日本のことを考えた。企業を取り巻く状況は米国と同じ。ただ、企業から出ることはマイナスのイメージが強く、派遣切りなど暗部ばかりが目立ちがあち。企業もバブル崩壊後、緊急避難ということで、かなり無茶なリストラもしてきたが、それもあってか、どちらかというと、いまは企業に雇用を守らせることばかりに議論が向かいがち。でも、グローバル競争の時代であることを考えると、それがどこまで可能か。民主党は、どのような雇用観を持っているのだろうか。これまでと同じイメージで考えているのだろうか。企業と国家に忠誠を尽くせば、雇用が守られる社会が、良い社会? あるいは、企業は「悪」、労働者は「善」なのだから、雇用が守られるのは当たり前?