澤地久枝「好太郎と節子 宿縁のふたり」

好太郎と節子  宿縁のふたり

好太郎と節子 宿縁のふたり

 澤地久枝による三岸節子の評伝。三岸好太郎との生活を中心に展開される。三岸節子は激しい人だと改めて思う。三岸好太郎、菅野圭介と、ふたりの夫はいずれも芸術家であり、その二人からの刺激が三岸節子の絵画をさらに進化させていったのもわかる。ただ、一人は夭逝し、一人は自滅していってしまう。こうした激しい生があって、あの絵が生まれてきたのか。三岸自身が語る人生は、林寛子の「三岸節子 修羅の花」が一番まとまったもののようで、この本の中でも引用されることが多い。ただ、それは三岸節子から見た視点であり、澤地久枝は、それをまた検証していく。菅野圭介との「別居結婚」解消に至る張本人として、節子本人は「週刊朝日」編集長だった扇谷正造を罵倒しているが、澤地久枝は、むしろ破綻していた結婚を扇谷が「離婚」報道することで終止符を打ってあげたと評価している。確かに、これで自由になった三岸はこの後、フランスに渡り、芸術家として、さらに大きく開花するのだから、扇谷は恩人と言うことにもなるのかも知れない。
 ともあれ、読んでいると、札幌の三岸好太郎美術館と愛知県一宮市三岸節子記念美術館に行ってみたくなる。