ケイト・サマースケイル「ネヴァーランドの女王」

ネヴァーランドの女王 (新潮クレスト・ブックス)

ネヴァーランドの女王 (新潮クレスト・ブックス)

 アマゾンの紹介文によると…

7歳でオスカー・ワイルドの姪に知と性の興奮を教えられ、女優ディートリッヒとも浮き名を流した男装のレズビアン、“ジョー”・カーステアズ。彼女は、国際モーターボートレース英国代表であり、一世を風靡した「世界最速の女王」でもあった。後半生、莫大な遺産をもとに英領西インド諸島の小島を買い取り、“ジョー”と呼ばれて島に君臨し、人形を偏愛し、華麗な交友を繰り広げた。その波瀾に満ちた94年の生涯を描く―。

 こんな時代に、こんな人がいたのかという、まさに破天荒の人生。資産家の娘だが、母は自己愛の人で酒と麻薬に溺れ、親に愛されずに育つ。男装の麗人というより、男装の冒険家として名をなす。20世紀の前半に、性の壁を超えて冒険の世界で名をなしたことは不思議な感じがしたのだが、その背景には、第1次大戦があった。大戦中にトラック部隊は女性も使っていたという。異常な戦争の時代に性の枠が壊れ、戦後も20年代はその行動も許されたが、30年代に入ると大恐慌もあり、社会は保守化、女性に対する「規制」が再び強まり、西インド諸島に隠棲することになる。マレーネ・ディートリッヒも登場するなど周辺の顔ぶれも華麗。ともあれ破天荒かつ華麗な人生なので、筆者は特に論評するわけでもなく、たんたんと、その生涯を描く。それだけインパクトのある題材といえる。