クラウス・ホネフ「ポップ・アート」

ポップ・アート NBS-J (ニュー・ベーシック・ジャンル・シリーズ)

ポップ・アート NBS-J (ニュー・ベーシック・ジャンル・シリーズ)

 タッシェン(TASCHEN)社のニュー・ベーシック・アート・シリーズの1冊。アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンスタインジャスパー・ジョーンズらの作品が収録されている。ポップ・アートは好きだなあ。で、本編に関係なく、印象に残った解説の一説。

 アヴァンギャルドの誕生が、近代ジャーナリズムの興隆と時を同じくしているのは、偶然ではない。ジャーナリズムの発達が美術の分野にもたらした根本的な変化の一つは、自ら芸術家ではなく、芸術家としての教育も才能も要件とされない美術評論家という専門的職業の成立である。評論家たちは多くの新聞紙上で明快な賛否の論戦を展開することによって、美術を一般社会へと橋渡しするとともに、以後自ら世論の代弁者を名乗るようになった。こうした変化に先立つ現象としては、世論の担い手が市民階級へと交代する社会構造の根本的な変化があった。それまでの社会生活が貴族階級を中心とするアンシャン・レジームの硬直したルールに支配されたのに対し、法の前に平等な市民層の対話が、社会・文化のあり方を決定するようになったのである。

 「世論の代弁者を名乗るジャーナリスト」ーーインターネットの時代になって、これが揺らいでいるなあ。「代弁者」がいつの間にか、自らを「権威」と勘違いし、新しい「貴族」になってしまったと「ネット市民」から思われているのではないか。市民の声を伝えるインターネットという新しい仕組み(ブログやら、Twitterやら、もろもろ…)が続々と登場する中で、何が社会・文化のあり方を決め、どんな新しいアートを生んでいくのか。新聞やら雑誌で「世論を代表するジャーナリスト」が、アートに死刑宣告をする時代ではなくなるのかもしれないし、一方で、アートをだれが発見し、どのようにサポートしてくのか。この文章を読みながら、つい考えてしまった。