クリストファー・ブラウン「バリュー投資」

バリュー投資

バリュー投資

 ベンジャミン・グラハムやウォーレン・バフェットなど伝説のバリュー投資家と仕事をしてきたクリストファー・ブラウンによる「バリュー投資」論。副題に「株の本当の価値を問う」。企業価値をきちんと評価し、割安株を調査、投資というバリュー投資の基本原則は、バフェットなどの本と変わらないが、グローバルな視点で国外の割安株を買ったり、情報を得るのにインターネットを利用したりするところまで書き込んであるところが21世紀的。PERであったり、PBRであったり、売上高販管費率であったり、流動比率であったり、資本負債比率であったり、急落銘柄の見直しであったり、投資銘柄選択の基本原則はオーソドックスだが、そうした銘柄選びがいまはインターネットなどで簡単にできるという。バフェット同様、ここでも株式を売買するよりも、じっくり持てと言う。
 また、最近はBRICsなど新興市場への投資論が盛んだが、それについては、こんな調子。

 アフリカ奥地の草原や、シベリアの大平原、アンデス山脈の急斜面に足を踏み入れるくらいなら、安定した政府と安定した経済が根づいている国々に留まって投資先を探したほうが、よほど確実に利益を手にできる。具体的には、すべての西ヨーロッパ諸国、日本、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、そして香港の非中国系企業である。私は、これらの安定した国々、民主主義と資本主義がほぼ確立している地域で、米国企業に適用してきたバリュー投資の基準に従って割安な株を探し続けるつもりである。

 これもまた見識。バリュー投資は、もともろ短期で利ざやを抜くようなデイトレーディングとは対照的は投資法だから。
 もうひとつ面白かったのは、最近、流行の行動経済学にも触れていること。投資家が合理的でなく、株価に売られすぎたり、買われすぎたり(バリュー投資の場合、特に売られ過ぎだが)することが、バリュー投資家にとっての投資機会を増やしてくれるという。群集心理で動いていくれるほど、逆張り型のバリュー投資(暴落は絶好のバーゲンセイル)は生きてくる。また、機関投資家の時代は、悪く言えばサラリーマン投資家の時代ともいえるわけで、言い訳を考えた投資行動(みんなが買ったから。みんなが売っているから。みんなが損しているから仕方ない)が増えるほど、バリュー投資は動きやすくなるとも。なるほど。
 さらに、債券に比べてインフレに強く、不動産に比べて維持管理費が安く、流動性が高いという株式投資の利点を説くことも忘れない。投信も、銘柄入替を頻繁にやっているようなファンドは避けた方がいいと言う。バリュー投資と言うのは、安く買って高く売る、それも長期的な視点で、という当たり前といえば当たり前、派手さに欠けた投資なのだが、やっぱり、これが王道なのかもしれないと思う。統計的にもそうらしいのだが、しかし、人間、我慢ができないんだなあ。
 で、成功する投資先を選ぶ16のチェックポイントは以下の通り

1. 製品価格の見通しはどうだろう? 値上げは可能か? コストが同じならば、1ドルの値上げによって、税引き前利益も1ドル増えるはずだ。
2. 売上高はもっと伸びるか? 販売個数の見通しはどうか? 売上総利益率が変わらなければ、販売量が10%増えれば売上総利益も10%増える。そのほかのコストが変わらなければ、税引き前利益は販売量が増えた分だけ増える。
3. いまの売上高のままで利益を増やすことが出来るか? 売上高に対する売上総利益の割合の見通しはどうなるだろう? 価格、事業構成、売上原価の一部に変更があれば、売上総利益率はどのくらい増減するだろうか。
4. 費用を管理できるか? 売上高に対する販売量および一般管理費の比率はどうなりそうか?これまでに何か変化があったか? あったならば、それはどのような変化だったのか?
5. 売上高を伸ばせるとしたら、最終利益はいくら増えるのか?
6. 以前よりも利益率が低下していないか? 少なくとも競争相手より高い利益率を達成しているか?
7. この先支払う必要のない一時的な費用を計上していないか?
8. 切り捨てることが可能な不採算部門があるか?
9. 経営陣は、ウォール街のアナリストによる利益予想に納得しているか?
10. 向こう5年間でどのくらい成長するか? どのようにすれば、それだけの成長が可能になるのか?
11. 事業活動で得られた余剰資金をどうしようとしているのか? 配当の形で株主に還元されなかった利益はすべて企業に留まる。経営陣はその資金を使って何をしようとしているのか?
12. 競争相手は何をしようとしているのか?
13. 業界内の競争相手と比べて財務状況はどうか?
14. 買収されるとしたらいくらか?
15. 自社株の買い戻しを計画しているか?
16. インサイダーは何をしているか?

 なるほどね。