ある結婚の風景
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2001/07/25
- メディア: DVD
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映画の筋書きは単純で、ある夫婦の結婚、離婚、そして再会を描くもので、ほとんどがリヴ・ウルマンとエルランド・ヨセフソンの二人芝居。夫が浮気して、妻に離婚したいと切りだすが、調停の末、いざ離婚届にサインする段になると夫が渋る。妻は痛手から癒えて自立した女になっているのに対し、夫は既に愛人との関係も仕事も上手く行かず、妻のもとに戻りたくなっている。男の身勝手さと甘え、強気と弱気、主人公は情けない男なんだが、そうした情けなさは男ならば、誰の中にでもあることに気づく。一方、女性は現実的でたくましい(男性監督の映画だから、これは男の見方かもしれないが)。それでも、人間としての孤独が癒えることはない。人間が分かり合うことは至難。傷つけることを恐れて本音を抑え、本音を言い出せば過度に傷つけ合ってしまう。しかし、それも時が流れ、エゴや見栄や世間体から次第に自由になり、身構えずに裸に会えるようになったとき、どこかで通じ合う部分が生まれる。結婚していても、別れても、一緒に暮らした歳月の重みは残る。そんなドラマ。人間って、そうだよなあ。
最初は、夫婦の痴話喧嘩をドラマにして面白いのか、と思っていたのだが、ふたりの演技の素晴らしさ、ベルイマンの脚本と演出に引き込まれる。夫婦の対話から人間が描き出される。しかし、この映画、ある程度、歳をとって見ないと、その良さ、深さがわからないんじゃないかと思う。どうしようもない夫婦ともいえるのだが、その弱さ、ときに見せる美しさも、自分が付き合ってきた人々、そして自分自身に思い当たるところがある。そうしたところを見つめることができるようになるには、この映画の夫婦同様、歳月が必要となるんじゃないだろうか。
しかし、この映画を見るまで、リブ・ウルマンがこんなに魅力的な俳優だとは思わなかった。美しく、繊細、そして時に強さも。なるほど、ベルイマンが気に入って使っていたはずだと思う。