京大カード、5×3カード、名刺カード---カードブームをつくった本

 亡くなった梅棹忠夫さんの「知的生産の技術」は、B6サイズの通称「京大カード」のブームをつくった。今で言うところの「Life Hacks」を探求する人たちは当時、一度はこのカードを試しただろう。ただ、B6というサイズは結構大きいので、別のサイズのカードの提案も出てきた。図書館などで使われていた5×3カードを提案したのが、この本。

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

考える技術・書く技術 (講談社現代新書)

 5×3カードは米国でよく使われている。米国で書かれた小説やシナリオを書くノウハウ本を読むと、アイデアを5×3カードに書いて整理するという話がよく紹介されている。このサイズ、京大カードと違って、スーツのポケットにも楽に入り、持ち運びに優れている。梅棹氏の本では発想整理に小さな紙(小ざね)を利用する話が出てくるが、こちらだと発想カードも兼用できる。著者の板坂氏は当時、ハーバード大学の講師だったと思うが、米国流情報整理の実体験から、このカードが出てきたのだろう。
 で、ポータビリティを考えると、さらに小さいサイズ、名刺カードでいいじゃないか、ということになる。情報整理に名刺カードを使うという先駆的な本はたぶん、これ。
書斎の小道具たち―天文博士のとても私的な文房具考 (1982年) (Century press)

書斎の小道具たち―天文博士のとても私的な文房具考 (1982年) (Century press)

 こちらは絶版になってしまった様子。名刺カードは、名刺入れに入るし、さらに整理するときに名刺ファイルが利用出来るというのがキモ。ホルダー型もボックス型もある。特にホルダーを使うと一覧性があるというところが売りだった。
 こうした一連のカード・ブームの後、ファイロファックスなどのシステム手帳が台頭し、発想整理にはポストイットが威力を発揮するようになるのだが、今でも、ちょっとした文房具屋さんならば、この京大カード(B6カード)、5×3カード、名刺カードは置いてある。そうしたところを見ると、やはり「知的生産の技術」「考える技術・書く技術」「書斎の小道具たち」の3冊が、Life Hacksの古典といえるのかもしれない。
知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)