ジョージ・ソロス『ソロスは警告する2009』

ソロスは警告する 2009 恐慌へのカウントダウン

ソロスは警告する 2009 恐慌へのカウントダウン

 2008年に出た『ソロスは警告する』の続編。2008年の金融危機の総括と2009年以降の経済の読み方について語る。ソロスはヘッジファンドのカリスマであると同時に理論家だと思う。市場に生きてきた人だが、「効率的市場仮説」も、ワシントン・コンセンサス(「小さな政府」「市場原理」「民営化」「規制緩和」などを世界中に広めることが善だとする考え方)も信ぜず、ブッシュ政権にも金融危機当時のポールソン財務長官にも極めて批判的。マーケットを知り、ハンガリーナチスを経験したユダヤ人だからこそ、単純な市場原理主義的な考え方はしないのかもしれない。安全志向の資産家は円と金に向かうとか、中国の隆盛とか、2010年時点からみて当たっているところも多い。
 目次で、内容をみると...

序 『ソロスは警告する』で見通せたこと、はずしたこと
第1章 私の2008年の投資実績
第2章 経済回復への処方箋
第3章 2009年の見通し
第4章 わが新パラダイムの運命
解説 松藤民輔

 付録として米上院商務委員会公聴会での石油バブル規制に関する発言、フィナンシャル・タイムズに寄稿した「ポールソン財務長官に好き放題をさせてはならない」「銀行システムに資本を再注入せよ」、特別寄稿「SDRが秘める可能性」の4編が収録されている。
 で、面白かった部分を抜書きすると...
 まず2008年にクラッシュが起きた原因について...

 第一のステップは、株式市場においては、買い持ち(ロング)ポジションと売り持ち(ショート)ポジションの間には非対称性があるという事実だ。(略)
 第二のステップは、CDS証券の仕組みと、CDS市場が債券の空売りを容易にしたという事実を理解することである。(略)
 第三のステップは、私がくりかえし前著(『ソロスは警告する』)で説明してきた「再帰性」を考慮に入れることだ。具体的には、金融商品の値つけを間違えた場合、本来であれば価格に反映されるはずの市場のファンダメンタルズ(価格を決定する基礎的条件)が、その誤った価格に影響されてしまう、ということである。そのような現象が最も顕著となるのは、信用と信頼に依存する度合いの高い金融機関の場合である。

 なるほどマーケットからみると、そうなるのか。ソロスは規制を否定しない。では、空売りなどについて適切な規制が実行されていれば、米国のバブル崩壊は未然に防止できたか。