カン・チュンド『ETF投資入門』

ETF投資入門 (日経文庫)

ETF投資入門 (日経文庫)

 取引所で取引される指数連動型の投資信託ETF(Exchange Traded Fund)のお勉強。仕組みも分散投資にあたってのメリットも頭ではわかるのだが、リスクのところが今ひとつ、すとんと落ちてこない。これは筆者の責任というより、こちらのアタマの悪い疑り深さゆえのことかもしれない。目次で内容を見ると...

[I] ETFとは何か
[II] ETFのどこが良いのか
[III] 日本と海外のETFの違い
[IV] さまざまなETF
[V] ETFのデメリットとリスク
[VI] ポートフォリオの組み方

 で、ETFの4つのメリットはこれ。

(1)透明性が高い
(2)流動性が高い
(3)維持コストが低い
(4)品揃えが豊富

 反対に、デメリットとしては

(1)売買時に手数料がかかる
(2)売買単位が若干高い
(3)分配金を自動的に再投資することができない
(4)売り気配買い気配の差(スプレッド)が生じる
(5)金額指定の売買ができない

 最後は「金額」というボリュームの話で、指値という意味ではない。で、このあたりのデメリットはそう大した話ではない。問題はリスク。

(1)市場リスク
(2)流動性リスク
(3)為替リスク
(4)上場廃止リスク
(5)トラッキングエラー・リスク
(6)理論価格と取引価格の乖離リスク

 流動性はメリットとリスクと両方、出てくる。上場して取引所で株式と同じように取引されることで「流動性」はあるのだが、当然のことながら、売買の厚みがなければ、本当の意味での流動性は生まれない。ETFがマーケットに定着し、市場参加者が増えれば、解消されるリスクなのだろうが、ETFの売買高を見ていると、不安になってくるETFもそれなりにある。こうなると、ETFポートフォリオを組むといっても、このあたりの個別のETF流動性を加味しないと、怖いような気がしてくる。
 加えて、日経平均とかTOPIXとか金とか、あたりまでならば、イメージがわくが、ETFも進化し、レバレッジを効かせたものとか、いろいろなものがある。このあたりの商品はさらに、ようわからん。ETFのリスクについて警鐘を鳴らす向きもあるようだ。
ETFが不安な既視感を与える理由(英フィナンシャル・タイムズ紙)- JBpress => http://bit.ly/jh9Bjq
 ETFは基本的に市場の平均に投資する商品。そこから「『平均』で本当にもうかるのか」という話になり、本の中では「MSCIコクサイ指数」のグラフが紹介されている。1969年を起点に世界の先進国市場に投資していたら、どれだけのリターンがあったかを見て、2010年まで投資していれば、どれだけのパフォーマンスがあったか、市場平均に長期投資するのが一番という。
 それは確かに、そのとおりなのだが、個人の投資として40年はあまにりも長い。10年、20年単位でどうかと、このグラフを見ると、1990年代後半以降のボラティリティ(価格変動)の激しさに目を奪われる。この10年余りでみれば、市場平均に対する投資は安全とはいえない。損を抱えている人もいるだろう。同じ図でなぜ90年代以降、ヘッジファンドが力を持つようになってきたのかを解説することもできそう。21世紀に入り、単純な右肩上がりの時代は終わり、インデックス投資で資産は守れないと。