滝口康彦『拝領妻始末』
- 作者: 滝口康彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1982/09
- メディア: 文庫
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映画との関係で言うと、「切腹」は「異聞浪人記」を忠実に映画化している。そして、それを映像的世界に昇華しているところがすごい。行間まで見事に映画化している。「一命」は「切腹」のリメイクではなく、「異聞浪人記」の再映画化という位置づけらしいが、「切腹」は見事な脚色、映画化で、どうやっても「切腹」と比較されるのは仕方がないだろう。小説のイメージから言えば、主人公の津雲半四郎(「切腹」では仲代達矢)は市川海老蔵よりも役所広司の役なのだろうなあ。市川海老蔵は井伊家家中の沢潟彦九郎のほうが向いている感じがする。「切腹」では丹波哲郎がやっていた役。一方、「拝領妻始末」はドラマチックに脚色されていた。
収録されていた短編は「拝領妻始末」「下野さまの母」「千間土居」「上意討ち心得」「異聞浪人記」「三弥ざくら」「綾尾内記覚書」「悲運の果て」。藩政の非道を描いたのは「拝領妻」「下野さま」「千間土居」。武士のメンツが「上意討ち」「浪人記」「三弥ざくら」、敵討ちの悲惨さが「綾尾」「悲運」。どれも面白く、どれも映画やテレビにできるような内容だった。