村上春樹『スプートニクの恋人』

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

スプートニクの恋人 (講談社文庫)

 初恋は同性愛だった。レスビアンの彼女「すみれ」と、彼女が恋した女性「ミュウ」と、彼女を愛する僕の三角関係の物語。男性2人に女性1人の物語は多いが、これは女性2人に男性1人の物語。「22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた」という冒頭から引き込まれたものの、16章構成の4,5のあたりで一度、読むのを挫折しかけた。しかし、6ですみれが海外に出てから、再び、村上春樹の物語の世界に引き込まれ、あとは一気呵成だった。『ねじまき鳥クロニクル』と『海辺のカフカ』の間の過渡的作品という感じがする。