「王者の資質」 レアル・マドリード監督ジョゼ・モウリーニョ−−やがてかなしき...

 WOWOWの「ノンフィクションW」で『「王者の資質」 レアル・マドリード監督ジョゼ・モウリーニョ』を見る。2010/11シーズンはFCバルセロナのシーズンであると同時に、インテルからレアル・マドリードの監督に就任したジョゼ・モウリーニョのシーズンでもあった。その意味で興味深い番組でモウリーニョの強さの秘密がわかる。
 傲岸不遜な態度で、メディアとの間で自ら摩擦を引き起こす発言も、選手への防波堤になるためと考えるとわかりやすい。確かに、今シーズンは負けても選手が責められるよりも、そのときにモウリーニョが審判団や相手チームなどに対して吐き出す悪口雑言にかき消された感じがする。敗戦の責任も全部、自分で引き受けるし、これほど頼りになる監督はいないかもしれない。とりわけ風当たりが強いスター選手を数多くかかえるクラブだけに、このモウリーニョのリーダーシップというか、マネジメントは生きるのかもしれない。
 一方で、この番組を見て、モウリーニョの原点は、9歳か10歳の頃のクリスマス、父親がクラブの監督を解任されるという悲惨な体験にあることも知る。なぜ、勝利に対する執念がここまでものすごいのか、それは、このときの体験にあったのだろう。結局、なんだかんだ言ったところで、サッカーは勝ってナンボだと。勝たなければ意味はないと。美しいかどうかは関係ないと...。
 グローバル競争時代の申し子ののような競争に対する執念がこのとき生まれ、今も変わることがないのだろう。その意味で、確率論的に勝ちにこだわっていくサッカーがモウリーニョの信条となるが、サッカーの勝ち負けよりも美しさを求めるクライフなどからは激しい批判を浴びることになる。クライフにとってサッカーは楽しいものだったが、モウリーニョにとっては違ったのかもしれない。子供の時から勝つビジネスであったのかもしれない。
 この番組、おもしろうて、やがてかなしき、というか、モウリーニョのサッカーは強いし、現代のようなグローバル競争社会のビジネスピープルの琴線に触れるものがあることがよくわかる一方で、クライフが言う「なぜ、そんなに勝ちにこだわるの?」の解答が子供時代の体験だとしたら、このこだわりも、ちょっと悲しく見えてくる。モウリーニョは、楽しんでサッカーをしたことがあるのだろうか。サッカーの楽しさを教えることはあっても、本人にとってサッカーが本当に楽しい物だったのかどうかはわからない。それ以前にサッカーは仕事だったのだろうか。バルセロナの気質とは対照的だなあ。
 そんなこんな、モウリーニョを考えるうえで、刺激的な番組だった。来シーズンもレアル・マドリードは勝ちにこだわるのだろうなあ。そのために、モリーニョは何でもするのだろうなあ。

モウリーニョの流儀

モウリーニョの流儀

★ノンフィクションW『「王者の資質」 レアル・マドリード監督ジョゼ・モウリーニョ - WOWOWオンライン => http://bit.ly/iAIKiN