モウリーニョはスペインサッカーを壊しているのか。ピケが心配するのは無理もない...

 スペイン・スーペルコパ(スーパーカップ)第2戦は、後半ロスタイムのマルセロの一発レッドカード・タックルで後味の悪い試合になったが、一方で、テレビを見ると、バルセロナのコーチの眼を指でつついて喜んでいるモウリーニョの姿も映っている。そんなこんなで、バルセロナのピケからは以下のような発言が...

「マドリーとは、何度も対戦している。過去、(サンチャゴ・)ベルナベウで6-2と大勝したときでも、このような騒動は起きなかった。マドリーを率いる人物が、スペインサッカーを壊している」

 確かに、昨日の試合を見ていると、ライバルチームへの敵愾心を煽り、相手の選手にケガをさせるようなラフプレイをしてでも勝てばいいのだという思想のように見えてしまう。モウリーニョの戦い方は、美しく勝つことで世界のサッカーをリードしているスペイン・サッカーと対照的で、ワールドカップ南アフリカ大会の決勝で、オランダが仕掛けた汚いサッカーに美しく勝ったスペインの伝統を否定する戦い方のようにみえる。こうした批判は既に高まっているし、これからも高まるだろうなあ。
 スーペルコパを見ると、レアル・マドリードは高い位置からプレッシャーをかけて、ボールを奪い、素早い攻撃を仕掛けていた。今年のレアルは、さらに進化したサッカーを見せてくれるとの期待感が高まる戦い方だった。スーペルコパを1点差で落としたとしても、それは気まぐれなサッカーの神様の采配で、試合としては互角、あるいは、レアルが優勢だったのかもしれない。しかし、レアルは勝ちにこだわる。バルセロナが少ないチャンスをモノにして、リードを取り、思うように追いつけないと、次第に攻撃的で美しいサッカーは乱暴で醜悪なサッカーへと転化してしまった。
 両チーム大乱闘に至るマルセロのプレイにも伏線があって、その前に、メッシとボールを競り合ったときに蹴りを入れていた。これもテレビでみると、ジャンプして降りるときに、故意にメッシに足を出しているようにみえる(テレビは、どこからでも撮している)。そのあとにセスクに対するライフプレイだから、ビジャがいきり立つのも無理はない。そして、セスクに対するプレイを、シャビはケガをさせようとしている、と非難していたが、あれは柔道でも禁止技になっているカニばさみで、足の骨を折りかねないプレイだ。接戦の良いゲームで、ロスタイムに入っても、レアルが1点入れて、同点にすれば、アウェーゴールなので逆転優勝となっていた。それなのに、試合を投げ出すかのようなラフプレイ...。後味は悪いし、そこまで相手をつぶしたいのか、という卑しさが際立ってしまった。
モウリーニョの流儀 モウリーニョは優秀な指揮官だし、こんな人ではないと思うのに、どうしてしまったのだろう。レアルでも選手はモウリーニョに対する忠誠心が強いが、それが変な方向に向かっている。カシージャスも、エジルも、ベンゼマも大好きな選手だし、ぺぺやマルセロの闘争心溢れるプレイも好きだ。しかし、それもサッカーであれば、の話で、昨日のマルセロのプレイは暴力だった。そして、敵愾心と暴力を煽った果てに何が起きるのか。それを不安視する声も出ている。
 レアル・マドリードの経営陣は、いまのレアルのプレイをどう考えるのだろうか。プロレスのヒール(悪役)のような悪(わる)としてのブランドにしたのだろうか。ならば、ユニフォームは白より暗色系のほうが合っている。モウリーニョは、スペインにとどまれるのだろうか。プレミアリーグセリエAでも、こういうやり方をしてきたのだろうか。しかし、この方法、美しいサッカーを目指すスペインには似合わない感じがする。ピケが危惧するように、ワールドカップを美しく勝ったスペイン・サッカーがこのままでは、勝つためには手段を選ばない勝利至上主義のサッカーに破壊されてしまうのではないか、と思わせる今シーズン冒頭のスーペルコパだった。
★シャビ、マルセロを批判 「セスクを傷つけようとした」- Goal.com => http://bit.ly/pWhhWQ
★ペップ:「記憶に残るスーペルコパ」 モウリーニョビラノバへの行為は「映像が物語っている」 - Goal.com => http://bit.ly/nLZCrw
★Starting a riot - Real Madrid's Jose Mourinho must stop inciting violence in Barcelona games before someone really gets hurt - Goal.com => http://bit.ly/nX0B3A