抵抗--死刑囚の手記から--

抵抗-死刑囚は逃げた [DVD]

抵抗-死刑囚は逃げた [DVD]

 ロベール・ブレッソン初期の名作。ナチ占領下のフランスで、捕らえられ、銃殺刑を宣告されたレジスタンスの若者が脱出するまでをドキュメンタリータッチで描く。フランス映画史の本を読んでいると、必ずといっていいほど出てくる映画だが、初めて見た。ブレッソンはプロの俳優を使わずに作品をつくることで有名だが、これも素人の学生を主演に起用したという。描写は精緻をきわめ、リアリティがある。脱獄モノの古典であると同時に、モデルといえるかもしれない。こうした精緻な描写がその後の脱獄モノのスタンダードとなっているともいえる。
 で、副題はWOWOW放映時は「死刑囚の手記から」だが、DVDのほうは「死刑囚は逃げた」になっていた。原題は「Un condamné à mort s'est échappé ou le vent souffle où il veut」。ネットなどで訳を調べてみると(フランス語は習ったけど、大方忘れてしまったなあ)、「脱出した死刑囚、あるいは、風はその思いのままに吹く」というところだろうか。「le vent souffle où il veut」はヨハネ福音書3章8節からの引用で、「風は欲するままに吹く」という訳もあるらしい。原題に「レジスンス」が入っているのかと思ったら、違った。死刑囚の手記というよりも、DVDの「死刑囚は逃げた」のほうが近いんだな。でも、「逃げた」と言い切ると、映画の緊迫感は失われるなあ。フランス映画は悲劇で終わるものが多いから、最後に失敗する結末もあるかと思って見ていたし...。
 で、この映画の主役を演じた学生、フランソワ・ルテリエはその後、監督になったのだな。で、監督したのが「さよならエマニエル夫人」。人生、わからないものだなあ。ブレッソン風の映画監督にはならなかったのだ。
シネマトグラフ覚書―映画監督のノート

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