彼女が消えた浜辺

彼女が消えた浜辺 [DVD]

彼女が消えた浜辺 [DVD]

 「別離」でアカデミー外国語映画賞をはじめ世界の映画賞を総なめしたアスガル・ファルハーディー監督の2009年の作品。テヘランの仲良し家族がドイツから一時帰国してい友人に女性を紹介しようとグループで休暇に出かけた浜辺での悲劇。日常的な描写から事件が起き、そこからイランの社会、生活の深層が浮き彫りにされていく。善意が空回りし、事態を混乱させ、悲劇を増幅する。この映画を見ると、「別離」も見てみたくなる。
運動靴と赤い金魚 [DVD] イランには「運動靴と赤い金魚」とか、良い映画が多いのだが、これもその一本。新聞やテレビのニュースで見るイランは核兵器開発問題など狭量で原理主義的な顔をしているが、映画で見るイランにはフツーの人がフツーに暮らし悩む様が描かれる。そこで見るイランは、人間の顔をしている。こうした映画ができることが自体、政治面で読む単色な世界ではなく、イランがより彩り豊かな文化的に成熟した社会であることがわかる。でも、不思議な国だなあ。何かの本で、中東で最も民主主義が根付く可能性がある国はイランだと指摘しているのを読んだことがあるが、映画を見ていると、納得できる。
 セピデーを演じたゴルシフテ・ファラハニ、エリ役のタラネ・アリシュスティなど、イランの女優には美人が多いとも思う。ファラハニは現在はフランスに住み、同じイラン出身のグラフィック・ノベル作家、マルジャン・サラトピ原作のフランス映画「鶏のプラム煮(Poulet aux prunes)」にも出ているという。このあたりを見ると、アーティストにとって、やっぱりイランは住みにくいのかなあ。アーティストを生む土壌はあるのに。
鶏のプラム煮 (ShoPro Books)