ジム・ホワイト『マンチェスター・ユナイテッド クロニクル』

マンチェスター・ユナイテッド クロニクル 世界で最も「劇的」なフットボールクラブの130年物語

マンチェスター・ユナイテッド クロニクル 世界で最も「劇的」なフットボールクラブの130年物語

 香川選手が移籍するマンチェスター・ユナイテッドの通史。副題に「世界で最も『劇的な』フットボールクラブの130年物語」。最初の感想は、ともかく長い。本文部分だけで570ページを超える。19世紀のヒートン・ヒースLYRから説き起こされ、詳細に論じられると、マンUファンではなかった単なるサッカー好きにとっては、ちょっとつらい。関心を持って読み始められるのは、欧州遠征中の航空機事故で大勢の主力選手が死傷した「ミュンヘンの悲劇」あたりからになってくる。そのあとは名前を知っている選手や監督の話が増えてくるので、一気に読めるようになる。
 ただ、読み終わってみて、思うことは、ユナイテッドは、好き嫌いがはっきりするクラブかもしれないということ。この本が「伝説」よりも「歴史」を語る本であったためかもしれないが、監督も選手もあまりにも人間的で、愛すべき人間とはいえない面が描写される。みんなアクの強い個性派。そして、クラブはマーケティングが得意で、テレビや株式市場をいまく活用し、スポーツビジネスとして大成功するのだが、それも、ちょっと鼻についたりする。日本で言えば、読売ジャイアンツだなあ。スポーツは伝説を読むほうが美しく、爽快なんだろうけど、筆者は英国のジャーナリストらしく冷めている。
 で、印象に残ったのは、この一節...

 多くの観点から鑑みて、マンチェスター・ユナイテッドの物語は三名の男たちの物語だと言うことができる。マット・バズビー、アレックス・ファーガソン、そして、アーネスト・マングノール。この三つの並外れた個性によって、ユナイテッドのリーグタイトルのすべてと11回のFAカップ制覇のうち八つがもたらされたのである。

 と言うように、本も、この3人を軸にマンチェスター・ユナイテッドの物語を語っていく。マングノールは事実上、マンUの初代チームマネージャー。バズビーは戦後のマンU黄金時代の監督で、自らもミュンヘンの悲劇に遭って重症を追いながら、クラブを再建した中興の祖。そしていま現在のユナイテッド黄金時代を作った現監督のサー・アレックス・ファーガソン。バズビーはユナイテッドに繁栄をもたらすと同時に、弊害も大きかった人物として描かれている。サッカーの監督もかなり政治的な職業で、政治だけ巧みな監督も出てくる。
 これを読むと、ビッグ・クラブだけに、監督も選手も、サポーター、メディア、ビジネス上のプレッシャーは半端ではなく、香川選手もつぶされないように頑張って欲しいところ。ファーガソン監督に信頼されての移籍のようだから、心配はあまり必要ないのかもしれないかもしれないが。
ファーガソン監督も太鼓判「心配ない」 香川「言葉に重みがあった」スポニチ => http://bit.ly/MPHt3t
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