カーメン・M・ラインハート、ケネス・S・ロゴフ『国家は破綻するーー金融危機の800年』

国家は破綻する――金融危機の800年

国家は破綻する――金融危機の800年

 話題の経済書。600ページに迫る分厚さに恐れをなして、なかなかページを開かなかったのだが、読み始めてみると、訳文もこなれていて平易で読みやすい。副題にあるように世界各国の800年の経済データを集め、分析して、国家の債務危機(デフォルト、インフレ)と銀行の金融危機、さらに、その経済への影響を解説する。債務危機・銀行危機に先立つバブルのたびに人間は良いところだけ見て「今回は違う」と思うのだが、800年の歴史を振り返ってみれば、人間がそんなに進歩しているわけでもないし、先進国にしても若かった頃はデフォルトで債務の踏み倒しをやったりしている。
 もっとも、一度傷ついた人間はバブルに遭遇しても楽観的にはなれないようで、80年代のバブルと90年代以降の金融危機、その後の「失われた20年」を体験した日本人は、2000年代のITバブルやサブプライムローン・バブルを醒めた目で見て、欧米の人たちが「今回は違う」と言うのを聞きながら、「デジャブだなあ」と思っていたところがある。そのデジャブという感覚的なモノを統計で論理的に証明してくれているような本ともいえる。まあ、日本も20年たって、バブルや90年代の金融危機をリアルで知っているビジネスピープルが減ってきているから、新たなバブルと銀行危機の土壌ができているのだろうから、こうした本を出す意味があるのだろうなあ。
 で、目次で内容を見ると...

序 章 金融の脆さと信頼の移ろいやすさを巡る直感的考察
第1部 金融危機とは何か
 第1章 危機の種類と定義
 第2章 債務不耐性ーーデフォルト頻発の根本原因
 第3章 金融危機データベース
第2部 公的対外債務危機
 第4章 債務危機を理解するための理論的枠組み
 第5章 公的対外債務デフォルトの周期
 第6章 対外債務デフォルトの歴史
第3部 国内債務とデフォルトの忘れられた歴史
 第7章 国内債務とデフォルトに関する標準的な項目
 第8章 国内債務ーー対外債務デフォルトとインフレをつなぐ失われた環
 第9章 国内債務デフォルトと対外債務デフォルトは
     どちらが悪いか、どちらが優先されるか
第4部 銀行危機、インフレ、通貨暴落
 第10章 銀行危機
 第11章 通貨の品位低下によるデフォルトーー「旧世界」のお気に入り
 第12章 インフレと現代の通貨暴落
第5部 サブプライム問題と第二次大収縮
 第13章 サブプライム危機の国際比較と歴史的比較
 第14章 金融危機後の比較
 第15章 国家を越えて広がる危機
 第16章 金融危機の総合指数
第6部 過去から何を学んだか
 第17章 危機の早期警戒システム、卒業、政策対応、人間の弱点を巡る考察

 目次を見てもわかるように、かなりの大著であり、これに巻末資料を含め、大量のデータがつく。国家の債務危機金融危機に関する教科書といっていいと思うのだが、この本が結構、売れているというのも、すごいなあ。データが豊富なので、レファンレンス資料として買っている人もいるのかもしれない。
★『国家は破綻する』( This Time is Different - A Book by Carmen M. Reinhart and Kenneth S. Rogoff )のサイト(英語)
 http://www.reinhartandrogoff.com/