松田賢弥『角栄になれなかった男 小沢一郎全研究』

角栄になれなかった男 小沢一郎全研究

角栄になれなかった男 小沢一郎全研究

 週刊文春で「小沢一郎 妻からの離縁状」*1をスクープした松田賢弥氏の本。これを読むと、あのスクープが昨日、今日浮いてきた話ではなく、筆者が20年以上にわたって小沢一郎問題を取材してきた集大成なのだな、と思う。小沢一郎という人は毀誉褒貶が激しく、親小沢も、反小沢も激している感じがするが、この本も親小沢の人からは蛇蝎の如く嫌われる類の本なのだろうが、その小沢批判には説得力がある。田中角栄竹下登金丸信に対する一種「親殺し」のような行動に加え、これだけ長い政治人生を送りながら、周りから次々と人が去っていき、周囲に盟友らしい盟友がいない。政党交付金企業献金、組織対策費など、カネをめぐる不透明性など、やはり小沢一郎という政治家を今ひとつ信頼しきれないものを感じてしまう。
 一方で、陸山会事件では、検察側の問題について触れていないことには、やや違和感もある。裁判や捜査で出てきた秘書たちの発言は、検察の捏造問題と無関係なのものか、信用性の検証がなされたものかどうかがわからない(これは執筆時期との問題だろうか)。このあたり、親小沢派の人たちには突っ込まれるのかもしれないなあ、と思ってしまう。
 離縁状スクープについては、夫人の精神状態が安定していないという週刊誌の報道*2も出ているが、この松田氏の本を読むと、田中角栄にしても、小渕恵三にしても、小沢一郎に裏切られ、心身を病んでいく。竹下登金丸信も捨てられる。権力のためには手段は選ばない非情さの一方で、マザコンで母にはとことんやさしかったという。小沢一郎氏に同情的な「小沢家の問題」記事と、この本で描かれた小沢一郎氏はつながっているところがある。ちなみに、前段の記事(ウェブ版)には愛人問題が出ていない。情緒不安定になったとすると、これが最大の原因のようにも思えるが、なぜないのだろう。「小沢氏への人物破壊」の中に愛人問題の暴露が入っているのだろうか。
 ともあれ、小沢一郎という人を知るうえでは、必読の本かもしれない。小沢一郎氏としても、この本の批判に正面から反論・論破して欲しいところだなあ。カネに関する問題はやはり理解不能な点が多すぎ(巨額過ぎ)、透明性が欠落している上に、合法であればなんでもいいのか、というところがある。
 最後に目次で内容を見ると...

第1章 非常のルーツ
第2章 田中角栄の秘蔵っ子
第3章 裏切り、そしてまた裏切り
第4章 権力の源泉ーー使途不明金
第5章 元秘書・高橋嘉信・衝撃の告白
最終章 カネこそわが力ーー小沢事件の本質

 で、読んでいて思ったこと。資産管理にあたって、小沢一郎氏は夫人の名義で資金を管理したり、不動産を取得したりしていたが、これって離婚したら、どうなるのだろう。当然、夫人名義の資産はすべて夫人のものなのだろうけど。その結果、いろいろなものが見えてきたりするのだろうか。

*1:小沢一郎夫人が支援者に「離婚しました」 - 週刊文春WEB => http://bit.ly/KsGO9R

*2:小沢一郎元代表と和子夫人 「離婚報道」に至るまでの経緯 - NEWSポストセブン => http://bit.ly/MKhatn