渋谷陽一+松村雄策『定本渋松対談・復刻版』

定本渋松対談・復刻版

定本渋松対談・復刻版

 ロッキング・オン名物の「渋松対談」の単行本第1弾。1986年に通信販売された本の復刻版で、1976年から85年までの中から選ばれたものが載っている。当初は記事で収録できないものを対談形式で入れることを目的にしたというが、その後はそうしたネタにも対応できるように雑誌の編集が進化したため、渋谷、松村両氏の掛け合い漫才のような時事・音楽放談に変わっていったというのだが、そのとおり、読んでいると、最初のうちはハードなロック論が多く、年を経ることにギャグの割合が拡大してくる。
 で、面白かったは、1978年の「渋松対談番外編・今だから話そうロッキング・オン苦闘の六年史」のこんな一節...

 渋谷 (略)投稿する人に言いたいのは、まず原稿はスタッフに読ますのではなく、読者に読ますのだという事を頭に叩きこんで欲しい。それと自分が読み手としてどんな文章を欲求しているのか、その辺を文章に反映させて欲しい。自分が読みたいという原稿でなければ、誰も読んでくれないもの。あと、自分の文体で、たとえ幼いものであっても、自分の文体で書いて欲しい。ロッキング・オンは依頼原稿ゼロの雑誌なんだから自発的な原稿がなければ潰れてしまうんだから。
 松村 それとね、あくまでミュージシャンなり、レコードなりは媒体だという事を解ってもらいたいな。こちらが知りたいのはツェッペリンでもレインボーでもエアロ・スミスでもない。それに触発されたあなたなのです。

 熱いなあ。こうしたところが、この雑誌の魅力であり、原動力だったのだろうなあ。
ロッキング・オン
/~\Fujisan.co.jpへ