ブラック・スワン

 遅ればせながら見たナタリー・ポートマンのアカデミー主演女優賞受賞作品。「白鳥の湖」の主役に抜擢された生真面目なバレリーナが精神的に追い詰めれられていく姿を描くスリラーというか、怪奇譚。バレーの技術は完璧だが、情熱、情念が足りないと演出家に迫られる一方、主役を務められるのかという周囲の目、主役の座をライバルにとられるのではないかという強迫観念に神経を消耗していく。芸術の世界では、こういうことあるんだろうなあ。日本人が描くと芸の道を描く芸道映画に近いものがある。芸を極めるために支払う大きな代償ーー日本の物語のテーマにもよくなる。
 次第に異常な心理状態に陥ってく演出が怖いし、ポートマンも肌は荒れ、次第にやせていくなど熱演で、これならば、オスカーは取るだろうな、という納得の演技。ナタリー・ポートマンは小柄だし、バレリーナっぽくないのだが、演技と映像演出によってバレリーナになりきっている。脇役は演出家にヴァンサン・カッセル。女優陣は、母親にバーバラ・ハーシー、先輩のプリマバレリーナウィノナ・ライダーという懐かしい顔ぶれ。実は、有名な映画だが、それほど期待していなくて、見るのが遅れたのだが、面白かった。