ウォール・ストリート

ウォール街 (特別編) [DVD] オリバー・ストーン監督の代表作のひとつである「ウォール街」の続編。前作のラスト、インサイダー取引で逮捕されたゴードン・ゲッコーが出所したところから始まる。ゲッコーを演じるのは前作に引き続き、マイケル・ダグラス。前作はジャンクボンドなどを利用したM&A狂乱時代の米国ウォール・ストリートの「強欲」を描いたものだが、今回の舞台はサブプライム危機の米国。
 オリバー・ストーン監督はジャーナリスティックな人で、現実の題材をタイムリーに取り上げるところが面白いのだが、ドラマ性を高めるために、図式的、勧善懲悪的、陰謀史観的なところもあり、そこが時として上滑りな印象を与える。ニューヨーク連銀での金融危機対策の会議は「ゴッドファーザー」に出てくるマフィアのドンたちの集まりと同じような描写の仕方。金融危機の描き方も、みんなの強欲と金融界のモラルハザードの結果、危機になりました、という感じで、意外と、あっさりしている。
 そんなわけで、この作品も面白いのだが、サブプライム危機を描いた映画としては、ちょっと...という感じも残る。基本的にウォール・ストリートは悪、大手銀行は悪という図式の中での単純化という感じがする。その一方で、カネに生きるゲッコーはヒーロー風でもあるので、グジャグジャになってくる。加えて、ゲッコーと娘の親子愛を美しくまとめとするので、さらに印象が曖昧になっていく。金融界と言うよりも、人間の欲を描いた映画なんだろう。
 前作ではゲッコーの「強欲は善(Greed is good)」が時代を象徴する名台詞だったが、今回も最も印象に残ったのは出所したゲッコーの講演での言葉だった。特に面白いと思ったのは、聴衆の学生たちに「君たちはNINJA世代」だというところ。「No Income, No Job, No Asset」。収入なし、職なし、資産なし、ということ。うまいことを言うなあ。