イテウォン殺人事件

イテウォン殺人事件 [DVD]

イテウォン殺人事件 [DVD]

 韓国のイテウォン(梨泰院)のハンバーガーショップで現実に起きた殺人事件を題材にした映画(まだ見ていない人は、このあとは読まないほうがいいです。オチまで書いています)。容疑者は少年二人。しかし、どちらが殺したのかがわからない。しかも、ひとりは韓国人とのハーフ、ひとりは米国生まれで米国籍も持っているので、米韓地位協定が捜査の壁になったりもする(このあたり、沖縄問題を思い起こさせる)。二人はお互いを犯人と名指し合い、捜査の初動ミスもあってか、どちらかを犯人と立証するだけの確たる証拠もなく、結局、犯人とされ、一審で有罪となった少年も最高裁が裁判を差し戻し、証拠不十分で無罪になってしまう。ひとりの青年が何の理由もなく殺され、犯人はふたりのどちらかとわかりながら、どちらも裁かれないという不条理な世界が生まれることになる。現実の話なので、映画でも、どちらが犯人か、はっきりとは描かない。立件した検事は正しい犯人を告発したのか悩み、弁護士は無罪を勝ちとりながら、実はクライアントが犯人だったのではないかと疑う。
 実話の映画化だけに重い。遺族は浮かばれない。ひとりの人間が殺されながら、誰も裁かれず、映画化の時点ではふたりとも社会に戻っていた。そうした不条理に対する告発の映画でもあり、実際、この映画の公開後、事件の再捜査を求める声が上がり、容疑者が再び、拘束されたという。
チャン・グンソク主演映画「梨泰院殺人事件」の容疑者、米国で検挙 | Joongang Ilbo | 中央日報(2011年10月11日)
97年「梨泰院殺人事件」の米国人被告、韓国に身柄引き渡しへ | Joongang Ilbo | 中央日報(2011年10月24日)
 で、このあと、どうなったのだろう。記事が見つからなかった。
 ハーフの容疑者を演じているのは、チャン・グンソク。この頃のほうが普通で、良かったなあ。ちなみに上の後者の記事には、チャン・グンソクが演じた容疑者のモデルになった人物の写真が出ている。