ジム・ロジャーズ『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)

冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)

冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 (日経ビジネス人文庫) オートバイで世界を一周した『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界バイク大紀行』の続編。前作は1990年から91年までほぼ2年かけての世界一周だが、今回は改造ベンツにフィアンセとともに乗り込み(旅の途中で結婚)、1998年末から2001年末まで3年かけての世界周遊ドライブ。各国を訪ねながら、その土地の空気を自分の肌身に感じると同時に、投資対象としての適否を見ていく。統計数字や政府や企業のセールストークではなく、現場から政治、経済、社会を見ていくところが面白い。こうして読むと、まだまだ賄賂が必要な国がいっぱいある。役人天国の国も多い。アングロサクソンというのは、こういう冒険商人的精神が旺盛なんだろうか、と思えてしまう。
 いくつか面白かったところを抜書きすると...

 一国の国民が若ければ若いほど、変化も受け入れやすくなる。年寄りが過去を好むのと同じように、若い人々は変化を好む。これは必ずしもどちらがよいという話ではない。また、こうした話のどれをとってみても取り立てて目新しいものではない。しかし、読者が将来のことを考えたり、投資を検討したりするなら、もちろん話は別だ。
 こうした考えは、私がイランについて楽観的な理由の一つでもある。実はイランには小額の投資を行なっており、今回の旅ではぜひ訪れたい国である。イランは若々しい国だ。今現在イラン人は持てる限りの子供を作っている。イスラム教の尊師(ムッラー)のことは忘れていい。国民の多くは、78歳の年寄りが言うことなど聞きはしない。若い人が立ち上がって、「今のやり方も好きだけど、昔のやり方のほうが今よりももっといい。昔の日々に戻ろう」と言っている国など、歴史上あった試しはないだろう。

 なるほど。人口構成から見てイランの未来に期待する人は少ないが、ロジャーズもその一人なのだな。
 上の話はトルコをめぐる話の中に出てくる。ユーロは若者が多いトルコを加えるべきであり、それが欧州経済に活力をもたらすという主張。こんな具合。

 トルコは7000万人を市場に連れてくる。欧州連合の中で最も大きい国の一つになる。税金も、関税も、通関手続きも必要ない7000万人規模の市場が得られるなら、フォルクスワーゲンは車をたくさん売れるだろう。政治家が認めようとしないことでも、実業家なら気づくのだ。個人的には、よく知らないトルコ人をいぶかしげに見るかもしれないが、先進的な企業家としては、トルコが必要なことがわかるだろう。ある国に何か問題があるとき、ほとんどの場合、問題の核心は経済にあると資本主義者なら知っている。宗教問題や人種問題に形を変えているかもしれないが、根本にあるのは経済問題なのだ。

 そして、ドイツの問題になる。

 ドイツを例にとってみよう。1960年代や1970年代のように経済が拡大しているときには、人種問題といえるほどのことは起きていなかった。発展が続く間、ドイツは移民を受け入れ、人々はそれに満足していた。君のところのくたびれた、貧乏な、安い労働力をよこしてくれ、こっちには彼らが必要だから、というわけだ。ドイツがビジネスをするには高くつくところになり、その結果競争力の低い経済になったときの人々の反応は、「あいつらを追い出せ。薄汚いよそ者なんか大嫌いだ。こんなことになったのは全部トルコ人ののせいだ」というものだった。、こうして、スキンヘッドのネオナチの連中がやって来た。仕事がなく、解雇が行われているとき、経済がうまくいなかくなったとき、誰もがそれを誰かのせいにしようとする。そして、その他の誰かとは、決まって外国人なのだ。いつだってそうだ。キリスト教徒、ユダヤ人、イスラム教徒、白人、黒人、黄色人種....、そしてアメリカ人、誰だって構わない。
 他人のせいにしたがるのは人間の性で、世界中どこへ行ったって変わりはしない。

 そうだなあ。日本も同じかも。日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とかいって、イケイケだった時代には、ヘイトスピーチなどという問題もなかった。貧すれば、鈍するのかなあ。
 最後に投資に関する話...

 多くの人が株式市場で犯す間違いの一つは、何かを買い、その値段が上がるのを見て、自分は賢いのだと思いこむことだ。こんなのは簡単だ、と思ってしまうのである。大儲けして、すぐに次の投資を探し始める。まさしくそんなときこそ、本当に何もしてはいけないのだ。自信というやつはすぐ自惚れたり、傲慢さに変わる。こういうときこそは銀行にお金を置いて、冷静になるまでしばらく浜辺にでも行っているべきときなのである。絶好の機会というのは、そうそうあるものではない。しかし、あまり間違いを犯さなければ、そうたくさん必要なものでもない。

 まあ、言うは易く、行うは難しだから、世界中、億万長者だらけということにはならないのだな。