上原善広『「最も危険な政治家」 橋下徹研究 孤独なポピュリストの原点』

 「新潮45」に掲載された時も話題になっていた橋下徹大阪市長の人物ルポ。最近はKindleで、雑誌の特集記事だけ抜き出して、電子出版化されているが、これも、そんな1冊。橋下市長の父親の話を始め、ルーツが紹介されている。橋下氏というと、佐野眞一氏の「週刊朝日」で連載打ち切りとなった橋下論が思い出されるが、あれって、この記事(本)の質の悪いコピーみたいなもんだったな、と感じも。上原氏のほうは、しっかりと取材してあるうえ、差別を煽るような興味本位の描き方もしていない。それでいて内容は、橋下市長の政治手法に極めて厳しい。例えば、こんなところ...

 政治家・橋下の戦術は大きく三つに分けられる。「大きく出ておいてから譲歩する」という弁護士時代に培った交渉術、そして「裏切り」と「対立構図の構築」だ。これまでの日本の政治家は内部で駆け引きを行うことが多かったため、一般庶民にはわかりにくかった。橋下の画期的なところは、それを庶民に披瀝し、劇場化するところにある。

 なるほど。大阪府政・市政など橋下氏の行政について評価が厳しすぎるのではないか、と思う部分もあるのだが、政治手法の分析は、確かにあたっている部分もある。そして「維新の会」のパーティは、こんな風に描かれていた。

 彼ら(維新の会メンバー)に囲まれて登壇している橋下はしかし、不思議なほどオーラがない。一人ぽつんと立っているかのような、不思議な孤独感を漂わせているのだった。私は思った。これは「維新の会」ではない。誰一人信用できない「戦国武将の会」だと。

 これは2011年9月のパーティで、石原慎太郎の太陽の党と合流する前の描写だけど、この「戦国武将の会」化がさらに加速した感じがする。そして、橋下氏の「不思議な孤独感」も一段と深まっているように思える。