石井光太『遺体−−震災、津波の果てに』

遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに

さんてつ―日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録― (バンチコミックス) 吉本浩二の『さんてつ』(吉本・石井の対談も収録されている)を読んで、この本のことを知り、こちらも読んでみる。震災・津波に襲われた釜石市で、廃校となった中学校が遺体安置所になる。葬儀会社をリタイアした民生委員のボランティア、市長・市役所員、検死にあたった医師、歯科医、葬儀会社の人、消防団員、自衛隊員、それぞれの証言を通じて、震災・津波の惨劇と、さまざまな家族の悲劇、生き残った人々の苦悩、死者を送ることで再生してく人々の物語を紡いでいく。一人ひとりの勇気と献身が深く心に響く。語り口が静かなだけに、どれだけ大きな悲劇をもたらした災害だったかを改めて知る。しかし、誰かがやらなければならないことを黙々と実行していく、こうした普通の人々に支えられて、いまの日本があるのだなあ。
 本を読んでから、グーグル・マップで、この本で描かれている釜石市の様子を見てみた。航空写真で見ると、いかに凄まじい被害だったか、わかる。家が消えている。震災から2年半余り。まだ復興が始まったばかりということを忘れてはいけないことも改めて痛感する。
 あとで気がついたのだが、この本、映画化され、DVDも出ている。