パトリシア・コーンウェル『切り裂きジャックを追いかけて』

 「検視官」シリーズのミステリー作家、パトリシア・コーンウェルは『真相"切り裂きジャック"は誰なのか?』で、切り裂きジャックは英国の画家、ウォルター・シッカートだと名指しした。その結果、切り裂きジャック研究者との間で論争を巻き起こるのだが、ジャック追跡から出版後の騒動まで、その顛末を書いたエッセイ。「Kindle Single」シリーズなので、さくっと読めてしまう短編エッセイで、『真相』を読みなくなる仕掛けにもなっている。この本を読む限りでは、シッカート説には説得力があるが、このあたりは反論も読んでみないと、わからないのかもしれない。この本を読んで思うのは、「切り裂きジャック」の時代には、まだ科学的な捜査方法が導入されていなかったということ。現在だと、ここまで連続殺人が続き、迷宮入りしてしまうことはなかったのかもしれない。