テレビをつければ、キムタクが出ているといいたくなるぐらい、「無限の住人」のパブリシティにテレビを走り回っていたが、このゴールデン・ウィーク、エマ・ワトソンの「美女と野獣」はあるは、とめどなくカーアクションが派手になっていく「ワイルド・スピード ICE BREAK」はあるは、子供連れの家族客に圧倒的に強いアニメの「名探偵コナン から紅の恋歌」はあるは、さらには怪演で乗りに乗っている菅田将暉の「帝一の國」はあるは、かなりの激戦区に思えた。こんな報道も...
じつはGWが近づくにつれて、映画関係者の間では今年のGWは「美女と野獣」の1位は確定、「名探偵コナン」「ワイルド・スピード」がし烈な2位争いを繰り広げるという声が大勢を占めていた。「無限の住人」はその3強から離された位置で、同じくコミック原作の実写化、菅田将暉主演「帝一の國」との4位争いがせいぜいだろうと期待値は急降下したという。
そうだろうなあ。「美女と野獣」がともあれ強くて、そこから溢れた観客が来てくれれば、という期待もあったと、この記事は続くが、現代の映画はシネコンが中心。いくつものスクリーン(収容客数も大小様々)を持ち、観客の動向に合わせて番組編成を切り替え、強い映画にスクリーンを振っていく。シネコンはスクリーンの配分を週ごとに変えている。なるべく機会損失を減らし、勝者総取りともいえるシステムで、どれだけのスクリーンを確保できるか、そして維持できるかで勝負が決まる。
ということは、シネコンの上映スケジュール(スクリーン数)を見れば、このゴールデンウィークの映画興行の行方を予測できるのではないか、と思って、よく行くシネコンの状況を調べてみた。そこは9スクリーンで、客席数は車椅子スペースを除いて1つのスクリーンが118席のものから365席のものまであり、9スクリーン合計で2129席。これが1日に何回か回転していくことになる。同じスクリーンでも上映作品が変わることはシネコンでは当たり前。ともあれ収益の最大化へ効率重視。
で、GWということで、5月3日の各作品の上映スクリーン数(1回の上映を1スクリーンとカウント)と、のべ席数(1日に収容できる最大観客数)を比較してみると...
1.「名探偵コナン」 (6スクリーン、1902席)
2.「美女と野獣」 (5スクリーン、1825席)
3.「ワイルド・スピード」(5スクリーン、1286席)
4.「無限の住人」 (4スクリーン、1192席)
5.「帝一の國」 (5スクリーン、1175席)
「名探偵コナン」が「美女と野獣」よりも席数が多いが、これは、うちのあたりが郊外の住宅街で家族連れが多いことと、「コナン」のほうが上映時間が「美女」よりも短く、1日の上映回数が多いことも影響しているためだろう。で、「無限の住人」は「帝一の國」と4番手争いという感じになる。ただ、「帝一の國」のほうが上映時間が短いので、席数は若干少ないが、上映回数は多い。どちらが有利かは微妙で、どっちが上とも言えない。
で、うちのあたりには、もうひとつ別の系列の9スクリーン、2211席のシネコンがあるのだが、こちらの「無限の住人」に対する評価はもう少し厳しかった(同じく5月3日の上映予定)
1.「美女と野獣」 (7スクリーン、2498席)
2.「ワイルド・スピード」(5スクリーン、1783席)
3.「名探偵コナン」 (6スクリーン、1577席)
4.「帝一の國」 (6スクリーン、1494席)
5.「無限の住人」 (5スクリーン、1115席)
ここは独身者や子供のいない若い夫婦が観客の中心となりそうな地域だが、「無限の住人」の集客力を厳しく見ているのだなあ。
調べているうちに好奇心が膨らんできて、TOHOシネマズ新宿(12スクリーン、2323席)の5月3日の予定も見てみた*1。
1.「ワイルド・スピード」(24スクリーン、5026席)
2.「美女と野獣」 (13スクリーン、5006席)
3.「名探偵コナン」 ( 9スクリーン、1717席)
4.「帝一の國」 ( 8スクリーン、1472席)
5.「無限の住人」 ( 7スクリーン、 854席)
新宿の土地柄が見える編成。「ワイルド・スピード」が受けそうな場所ではあるが、スクリーン数がやたらと多いのは、深夜興行が多いからでもあって、のべ収容客数は別として、実際の観客動員では「美女と野獣」のほうが多そうな気もする。いずれにしても、「無限の住人」は5位。菅田将暉の「帝一の國」のほうに興行的な魅力を感じている様子が見える。
びっくりしたのは関西を調べたときだった。TOHOシネマズで関西といえば、梅田かな、と思ってチェックしてみた。本館・別館合わせて10スクリーン、2654席。やはり「美女と野獣」を先頭に「名探偵コナン」「帝一の國」「ワイルド・スピード」が並ぶ。しかし…。「無限の住人」がない。スクリーンをひとつも確保できていない*2。地域的なものか、ほかのビジネス上の都合か、事情はわからないが、ない。不戦敗状態。スクリーン数・席数は本で言えば、配本数のようなものだから、実際にどれだけ売れたのかどうかと直接は関係しないといえば、しない。しかし、スクリーン数が少ないのと、スクリーンがないのとでは話が違う。それでは最初から勝負にならない。うーん。こういうシネコンがあるとなると、首都圏では存在感があっても、全国の数字を集計してみたら、興行成績で差が出てしまう。「帝一の國」に引き離されていく。
TOHOシネマズの場合、いまは4日(木)までの上映スケジュールが公開されているが、この次の上映スケジュールがでてきたところで、各作品の現実の状況がわかるのだろう。スクリーン数を維持、拡大できているのか、次の作品に奪われるのか。シネコンって、けっこうシビアな評価システムでもあるなあ。作品的な評価は別にして、興行としての評価は「見える化」されてしまう。
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