異才、小室直樹氏が死去

小室 直樹氏(こむろ・なおき=評論家、東京工業大特任教授)4日午前1時3分、心不全のため東京都文京区の病院で死去、77歳。東京都出身。葬儀は近親者で済ませた。東京生まれで、小学から高校まで福島県会津若松市で育った。京大卒業後、社会学政治学などを学び、多彩な分野で評論活動を続けた。06年から東京工業大世界文明センターで特任教授を務めた。

 何日か前からTwitter上で、小室氏死去との話が出ていたが、メディアではなかなか報じられなかったので、どうなっているかと思ったら、今日になって一斉に訃報が流れ始めた。やはり亡くなっていたのか。天才として嘱望された人で、輝きを持った時期もあったが、次第に「奇人」のカテゴリーに入ってしまった気がする。著作は膨大で、専門書というよりも、向こう受けを意識した奇を衒ったタイトルの評論が多く、学者的な本ではなかったが、知的な刺激に満ちが本が少なくなかった。極端な議論によって物事の本質を描き出すというところが真骨頂だったのだろうが、一歩間違うと,ただの極論となってしまいかねないところが、こうした路線の難点かもしれない。
 印象に残っているのは、やはりデビュー作、「危機の構造ーー日本社会崩壊のモデル」だ。これを読んだときは本当にすごいと思った。持っている文庫本の裏表紙に書かれた内容紹介を記すと...

表面上の社会レヴェルはともかくとして奥底の社会構造レヴェルでは、日本人の思考・行動様式も集団構成の原理も戦前と何ら変わらない。機能集団が運命共同体としての性格を帯び、かかる共同体的機能集団の魔力が日本人の行動を際限もなく呪縛するのだ。その矛盾のダイナミズムの所産たる“構造的アノミー<無規範>”の生成と社会における展開過程を分析した著者の記念碑的処女作。

 この先、どんなすごい社会学者になるのかと思ったら、ジャーナリスティックなほうに行ってしまった。サービス精神が旺盛なのか、本人の性格なのか、わからないが、極端な表現によって、奇人の世界に行ってしまい、そのイメージが本の正当な評価をも阻害したようにも思える。そうした道へと行ってしまったことが何とも残念だ。そして、この訃報の経歴をみると、最後は「東京工業大学世界文明センターの特任教授」を務めていたようだが、「特任」というところに見られるように、学会の側にも小室氏を受け入れるだけの器がなかったのかもしれない。この記事にあるように、代表作は1980年にソ連の崩壊を予言した『ソビエト帝国の崩壊』なのかなあ。でも、個人的には一番好きなのはやはり「危機の構造」だ。
 ともあれ、異才に合掌。
【参考】
ウィキペディアで見ると
 wikipedia:小室直樹
Googleで検索すると
 google:小室直樹
Amazonでは

・絶版みたいだなあ...・これも古い本だし...
信長 ー近代日本の曙と資本主義の精神ー

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・一番,新しい本がこれかな。今年も本を出していたのだ。多産だなあ。
 このほかAmazonで検索すると => amazon:小室直樹
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