雪室俊一「テクマクマヤコン」

テクマクマヤコン―ぼくのアニメ青春録

テクマクマヤコン―ぼくのアニメ青春録

 「サザエさん」など人気アニメのシナリオ・ライター、雪室俊一氏のアニメ青春録。イクラちゃんの名前は長谷川町子の原作にはなくて、雪室氏がゴッドファーザーだとは知らなかった。「テクマクマヤコン」を生み出したのも同様。「ファンレター」など、ペンフレンドをめぐる胸がキュンとするような思いで話も出てくる。脚本家の人のエッセーは面白いのだが、この本も読みやすい。一方で、現在の制作現場の限界も描かれる。特に会議によるチェックが激しくなっているところ。みんなで意見を出し合えば、改善されるものでもないのに、何度も議論と改訂が繰り返される。これはビジネスの現場でも同じことがいえる。個人に任せることよりも、会議で話し合って、という形が行われがち。これは責任を分散させるというか、誰の責任かが不明確になるところはいいのだが、独創性が消えていく。アニメでも同じことが起きているのだなあ。