スコット・フィッツジェラルド「グレート・ギャツビー」(村上春樹訳)
- 作者: スコットフィッツジェラルド,Francis Scott Fitzgerald,村上春樹
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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登場人物たちはいかにも米国的。アメリカン・ドリームを追い続けて、その果てに裏切られて、崩壊していく。また、求めていたものに、それほどの価値があったのか。トムとデイジーは、無邪気で無分別で、周囲を傷つけ、それに気がつかないし、後ろめたさもない。帝国と化した米国そのもののよう。トムには、ブッシュの姿が重なり合う。そんな現代的なアナロジーもできるぐらい、小説のキャラクターに米国が凝縮されている。1925年というローリング・トウェンティ、バブル化しようとする米国の繁栄の中で執筆されたものなのに、その後の崩壊を予感しているようでもある。出版当時、期待したほど売れず、フィッツジェラルドは落胆したらしいが、誰しも自分の姿を見るのは嫌なもの。売れなかったのもわかる。一時は絶版になったとも言う。この小説が受け入れられるようになるには、米国が知的に成熟する必要があったのだろう。
村上春樹の訳書あとがき「翻訳者として、小説家として」もなかなか読ませる。「グレート・ギャツビー」の翻訳は村上本人としても、満を持しての自信の翻訳と言うが、それだけ自負するのもわかる。原文と翻訳を比べてみたい気がしてくる。久しぶりに、小説を夢中で読んでしまった。