村山治「特捜検察vs.金融権力」
- 作者: 村山治
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2007/01
- メディア: 単行本
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1990年から2006年までが描かれるので、駆け足で見ていく感じはするが、面白かった。こんなことが検察と大蔵の間で起きていたのかあ、という話が出てくる。大蔵省も、検察も国益を考えて、日本が抱えている問題を解決していこうとするんだけど、日本が抱える暗部にけじめをつけようとしたときに、自らも「大蔵・日銀接待問題」やら「検察の調査活動費不正利用問題」など暗部を露呈することになる。バブル後は、政治も経済(市場)もシステムの透明性を高めることが課題になったわけだけど、それは日本システムそのものの問題でもあるから、システムの根幹を支える存在ともいえる大蔵も検察も、改革の激流に呑み込まれてしまうことになる。そんな歴史が見えた。
と同時に、どんな組織でも動かすのは人間だから、この本は組織と個人の物語でもある。一番、印象的なのは検察同期の原田(法務省系で、のちの検事総長)、石川(大蔵汚職を摘発した東京地検特捜部長)のふたり。同期として認め合いながら、途中から、自らの組織(原田は法務省系、石川は特捜部に代表される現場系)の代表として、対立の構図に身を置くことになる。しかも、捜査をめぐる小さな齟齬の積み重ねが不信へと発展していく。このあたりは人間ドラマだなあ。
最後の検察と金融庁(財務省・国税庁)の“和解”は、ふたつの権力が再び一体化するわけで、ちょっと怖い感じで、ハッピーエンドとも思えない気もするけど、ともあれ、新しい日本の公益とは何かを考えなければならない時代なんだなあ、その公益を守るためのシステムはどうあるべきなんだろうかというようなことを考えさせて終わる本だった。