過去のない男

 フィンランドの映画を見るのは初めてだが、何とも不思議な映画だった。粒子が粗く、色調もどこか古く、1950年代ぐらいのカラー映画のような印象を受けた。2002年の映画とは、とても思えない。登場人物たちの貧しさもあり、第2次大戦後間もない時代の映画のようにさえ見える。これが、リーナス・トーバルスが育ったフィンランドの現在なんだろうか。銀行の貸し渋りで倒産した中小企業の社長さんが出てくるところなど、日本と同じような感じがして生々しいが、捨てられたコンテナで暮らす人とか、救世軍とか見ていると、戦後復興期という感じがしてしまう。美男美女が出るわけでもなく、中年男と女の恋愛とか、地味な内容で淡々と進んでいく。それでも、最後まで見てしまったということは、この映画の世界が独創的ということか。カンヌ映画祭でグランプリを取ったのは、分かる気もするし、不思議な気もする。あまりにも現代とずれていて、個性が際立ったのかもしれない。孤独で、さえない救世軍の中年女性を演じたカティ・オウティネンがカンヌで主演女優賞をとったのはわかる。で、この人、アニメの「ザ・シンプソンズ」に、よく出てくるキャラクターに何となく似ていた。
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